Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.6
tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。
今回お話を伺ったのは、鳥屋尾 健さん
公益財団法人キープ協会 環境教育事業部長や、山梨県地球温暖化防止活動推進センターのセンター長、都留文科大学での非常勤講師を務める。「おもしろそう!」が原動力。
Instagram @fureai_center
「つながり」を発見できる自然体験型環境教育を目指して
みなさんが「環境教育」と聞いて、思い浮かぶイメージは何ですか?わたしの頭に浮かんだのは、子どもたちが森のなかで泥だらけになって楽しそうに遊んでいるイメージでした。鳥屋尾さんの言葉をお借りすると、環境教育とは、世代や背景は問わず誰もが五感をつかった体験を通じて、自然や世界のなかの“つながり”を実感できる人になること。
今回は40年の歴史をもち、日本の環境教育のメッカともいえる公益財団法人キープ協会環境教育事業部を訪ね、キープ協会の取り組みや、そこで働く鳥屋尾さんの原動力を伺いました。
キープ協会のルーツは、戦前にさかのぼります。清里地域の開拓にはじまり、地域の若者が希望を持てるコミュニティをつくることを軸にして、取り組みがされてきました。いまでは240ヘクタールに及ぶ広大な敷地で、牧場での酪農や商品販売から、清里聖ヨハネ保育園を通じた子育て支援まで、幅広い活動を行っています。
そのなかで、1983年から取り組んでいるのが「環境教育」
「キープ協会が環境教育を行う上でずっと大切にしてきたことのひとつは、五感をつかった体験です。自らが発見することを大切にして、型にはまった教育ではなく、その人のなかにある種が芽を出すためのひとつのきっかけであることを意識しています。そして、長年つづけてきたなかでのキーワードは、協働。子どもだけではなく大人も対象にした取り組みをしていて、テーマも科学者やアーティストなど様々な業種の方と掛け算をすることで、幅広くなっています。最近では、心療内科の先生との取り組みも行なっているんですよ」
環境教育という言葉が今よりもずっとずっとマイナーであったであろう頃から、40年もの間つづけられてきた、キープ協会の取り組み。その根底には、実にシンプルで力強く、柔軟な姿勢がありました。
鳥屋尾さんがキープ協会に出会ったのは、約30年前。都留文科大学で社会教育を学びながら、自身の興味に素直に過ごしているなかで、キープ協会主催のキャンプに学生ボランティアとして参加したのが始まり。そこで働く大人たちのおもしろさに心ひかれたのだそう。
その後キープ協会へ就職し、現在も環境教育に携わり続ける原動力は、どんなところにあるのでしょうか。
「この仕事は、自分にとってぜいたくな仕事です。自然のなかでの体験を通して、参加してくれたひとが変わっていくのがわかる。参加する前と後で、表情や言葉が変わるんです。教育は一生かけてもおもしろい仕事だと言っていた先輩の言葉が、よくわかりました。それにもうひとつ、環境教育は“関係教育”ともいわれます。どういうことかと言うと、自然のなかでは様々なものがつながり、関係しあって生きています。つまり、環境を考えることは、つながりを知ることであり、ただつながっているのではなく関係し合っていると理解すること。この『すべてつながっている』という感覚を大学生のころにふと気が付いてしまって。笑 すごく衝撃だったんですね。環境教育の仕事をする上でも、人と自然や社会のつながり・関係性があるという視点をもってもらえたらと思っています」
ひとと自然、植物と水と太陽と空気。すべてのものはつながっていて、一つが悪くなるとほかにも影響を及ぼす。対処療法的な考えではなく、まわりとの関係性をみながら、全体のめぐりを良くしていく。
その視点を得ることが、環境教育の役割であり、循環する暮らしをつくるヒントになるのではないか。鳥屋尾さんのお話を聞きながら、そんなことを感じました。
これまで様々な取り組みをしてきたキープ協会ですが、これからをどのように見据えているのでしょうか。
「キープ協会としてはこれからも、五感をつかって体験できる場と機会をつくっていきます。とくに清里という地域に根差して、観光を入り口にこの地域ならではの自然の魅力を知ってもらえるような取り組みを続けていけたら。都市と農村のよい循環、よい関係をつくっていきたいですね」
鳥屋尾さん個人としては、娘さんの成長に合わせて、次世代の子どもたちに必要な場づくりや、公教育と地域の関係に興味をもっているそう。
「より異文化、より異世界との出会いというのも、自分にとってわくわくするテーマです」
そう話す鳥屋尾さんの目がほんとうにキラキラとしていて、軸があるなかでも柔軟に変化をしていく姿勢を感じました。
鳥屋尾さんの働く八ヶ岳自然ふれあいセンターでは、自然体験プログラムや特別プログラムの実施や、館内では八ヶ岳の自然について知ることができる展示があります。
「世界はおもしろい、と思える入り口」鳥屋尾さんがそう表現したお気に入りの本のように、ここがみなさんにとって何かの入り口になるかもしれません。ぜひ、自然豊かなこの場所を訪れてみてくださいね。
writer @hinakomugi
山梨県八ヶ岳自然ふれあいセンター
〒409-1501 山梨県北杜市大泉町西井出石堂8240−1 MAP
TEL 0551-48-2900
HP https://fureai-c.info
Instagram @fureai_center
入館料|無料
開館時間|9:00~17:00(火曜休館)
夏期7~9月 9:00~18:00/冬期11~2月 9:00~16:00
\ 鳥屋尾さんオススメの本はこちら /
『理科ハウス図録 世界一小さい科学館』理科ハウス10年間の展示の記録をまとめた図録。鳥屋尾さんはページをめくりながら、「こういう入り口のつくり方があるのか…!」と、自然環境教育の企画などを考える際にアイディアをもらっているそう。
\ もっと詳しく知りたい方はこちらもどうぞ /