Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.1
tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。
今回お話を伺ったのは、大原勝一さん。
山梨と甲府をこよなく愛する「株式会社SHOEI」代表取締役社長。一生懸命で真っ直ぐな人が大好きで、すぐ応援したくなる。古いものを大切に新しいことにどんどん挑戦中!
Instagram @renovation_shoei
次世代型の「農ある暮らし」結~yui~
老朽化して物置となっていた古民家が息を吹き返し、人々の交流と次代の豊かな暮らしにつながる情報発信の拠点となっている場所があります。それは、愛宕山にあるシェアハウス「結~yui~」(以下、結)。この場所を手がけたのは、甲府市の設計事務所「株式会社SHOEI」のリノベーション部門である「R/SHOEI」です。結が誕生した経緯や特徴を紹介するとともに、さまざまなアーティストとコラボレーションを手掛けているR/SHOEIの大原社長に想いを伺いました。
「結~yui~」が誕生したきっかけ
誕生のきっかけとなったのは、2015年にR/SHOEIが手がけた甲府中心街の古民家リノベーションでのできごと。リノベーションした古民家の大家さんに「別の家もどうにかならないか」と紹介されたのが、のちに結となる建物でした。しかし、資金の関係でしばらくは手つかずに。
大きく動き出したのは、2020年。SHOEIが山梨官民連携空き家活用促進事業者第一号に認定され、県のサポートを受けられることに。「結~yui~PROJECT」がスタートし、リノベーションを経て2021年9月にオープンを迎えました。
「結~yui~」の特徴
結はリノベーションの際に、現地の古材や古家具を可能な限り再生したそう。囲炉裏や釜戸、五右衛門風呂などかつての日本にあった「薪や炭を使ったサスティナブルな暮らし」が体験できるように修繕。できるだけ土に還る素材を使用して、環境への配慮が行き届いているのも特徴です。
R/SHOEI大原社長の想い
いま、地球では温暖化や食糧危機、日本では人口減少などさまざまな問題を抱えています。そこで大原社長は結が「次代の豊かな暮らしへの扉」となるよう、次代のために自分自身ができることとして、空き家や放棄農地を整備。この場所で「農ある暮らし」を軸に生命や人の循環(輪)の大切さを伝えていこうと実証実験を重ねています。
「天井や壁の漆喰塗りや珪藻土塗り、天井の柿渋ベンガラ塗りなどのワークショップを開催して、地域の方も一緒にリノベーションをしたんです。隣にある放棄農地の整備も行いました。結では、文化芸術や音楽などのアートとアグリカルチャー(農ある暮らし)を取り込みながら、かつての日本の生活様式で暮らすことがコンセプト。『農による食は身体を育み、アートは心を育んでくれる』。人にとってこれら二つは太古よりかけがえのない原点だと思うからです」
持続可能なだけでなく循環しながら再生していく社会を目指していきたいと言う大原社長の想いに共感して、沢山のコラボレーションが実現。結の活動はさまざまなメディアで取り上げられています。
自然な循環を生み出す「アグリカルチャー(農ある暮らし)」
結のイベントスペースには、農業体験ができる自然栽培の菜園を併設。隣地の農園では綿の栽培も行い、収穫した和綿を紡いだり染色したりするワークショップも開催しています。
「地球温暖化の大きな原因になっている化学肥料や、生態系の破壊につながるような沢山の農薬を使用せざるをえない大量生産の農業はではなく、土壌の中にいる微生物や菌、地上の様々な生物や植物の循環の力を借りながら、安全で栄養価も高く、免疫力も備えた作物を育てていきたいですね。沢山の人が『農ある暮らし』をすることによって、私たち日本人の食の危機回避にもつながるはずです。これまでの人類の活動によって地球が再生可能な限界を超えようとしている今、地球のあらゆる生命の循環を再生(REGENETATION)することが必要だと思っています」
日本は食料自給率が低く、肥料や飼料などもほぼ全て輸入頼み。農業生産者の減少や高齢化、逆に世界では人口が増加し、今のような輸入頼みの農業では今後日本ではますます食料が高騰し、さらには食料確保が難しくなる可能性が高いといわれています。
大原社長が結という構想にたどり着いたのは、そんな危機感も背景にあったそう。人も生命の循環の中で生きていると思い出し、「農ある暮らし」を実践しながら、これからの時代を見据えた豊かな暮らし方を伝えていきたいと話してくれました。
「結~yui~」が提案する循環していく未来への取り組み
「地球温暖化を食い止めよう」「自給自足を取り込もう」といわれても、正直なにからはじめれば良いか困ってしまいますよね。かといって、手の込んだことをしようとするとなかなか続きません。
そこで結では、アートとアグリカルチャーが手軽に体験できるよう、夏と冬に「結FES」を開催。音楽ライブや野外映画鑑賞、絵本の読み聞かせ、アート展示、結農園で採れた綿で糸紡ぎや織物づくり、草木染め、麦踏み体験など。”楽しみながら地球のことを考えるきっかけにしてほしい”といった想いが込められたイベントになっています。
コンポストでキッチンから地球温暖化防止の第一歩を
キッチンという生活に根付いた空間から、地球温暖化防止につなげられる活動ができることをご存じですか?そのひとつが「コンポスト」。コンポストとは、生ごみや落ち葉から堆肥を作ることです。コンポスト容器に家庭から出た野菜くずや食べ残しなどを入れ、微生物のパワーを活用し堆肥にします。
お話会「暮らしの中から出来ること」
結FESで講師を務めるのは、一般社団法人ワンジェネレーションおよびRegeneKO共同代表の久保田あやさん。北杜市で子育て仲間と「台所から地球再生」を目指して活動する、4児のママ。
近年、昔よりはるかに猛暑日が多くなったり、ゲリラ豪雨が頻発したりと地球温暖化の影響を肌で感じるようになってきました。地球温暖化が進んだ原因には、私たち人間の活動が関係しています。
では、地球のために人間はいなくなった方が良いのかというと、そうではありません。「人は日々の暮らしを通して、環境を破壊するのではなく、地球といういのちそのものを豊かにすることができます」と久保田さん。
私たちが廃棄している生ごみや食べ物など、日本における生ごみの排出量は、なんと年間1,800万トン強。食品ロスは523万トンとされています。生ごみや食品には水分が多く含まれているため、焼却処理するには膨大な燃料を使わなければなりません。その結果、地球温暖化の要因となる温室効果ガスも発生してしまいます。
そこで、日々の暮らしの中で無理なく続けられる取り組みとして、コンポストを提案。料理の際に出た野菜くずや食べ残しなどをコンポスト容器に入れ、堆肥にします。コンポストを実践すれば、家庭から出るごみが減少。さらに、できた堆肥で野菜を作れば地球のサイクルにもつながるのです。
コンポストは、容器に生ごみを入れて埋めておけばOK。あとは1日1回程度かき混ぜるだけで微生物が生ごみを分解し、堆肥にしてくれます。この手軽さも、コンポストをおすすめする理由のひとつ。
コンポストワークショップ
お話会が終わったあとは、結の隣接農園でコンポストワークショップを行いました。畑の一角に枠組みが作成されており、その中に落ち葉のコンポストを作っていきます。
まず、枠組みの中に落ち葉を投入。平らにして、発酵が促進するよう米ぬかも振りかけます。水で適度に湿らせたら、次の落ち葉を入れて…参加者も協力して落ち葉と米ぬかの層に。堆肥になるまでときどき天地返しをするそうです。
家庭でチャレンジしやすいバック型コンポストのやり方も、久保田さんがレクチャー。「はじめは生ごみをコンポストの真ん中に入れて土をかける」「熱が出て水分量がほど良くなってきたらかき混ぜる」と、目の前で実践してくれました。
参加者の反応・感想
コンポストワークショップでは「ふかふかで気持ち良い!」「寝転んでみたい」との声が。講師の久保田さんへも「コンポストに入れない方が良いものは?」「なかなか堆肥にならないときの対応は?」など、積極的に質問が飛び交っていました。
コンポストワークショップのあとには釜戸ご飯と味噌汁が提供され、みなさん笑顔に。結FES WINTERは、参加者の充実度の高さがうかがえるイベントでした。
アクションに迷ったら「結~yui~」を訪れてみよう
大原社長のこだわりと未来への想いが詰まった、結。一緒に体験してみると、自然と”できることをやってみようかな”という気持ちが湧いてきます。なにからはじめれば良いか分からないときは、ぜひ結へ足を運んでみてくださいね。未来の豊かさにつながるアクションがきっと見つかるはず。
結 ~ yui ~
活動拠点|山梨県甲府市
HP https://r-shoei.com/yui/
Instagram @yui_renovation_shoei @yui_fes_yamanashi
甲府市愛宕町にある古民家空き家連棟群をリノベーションした絶景シェアハウスとイベントスペース。イベント棟は時間貸しも行なっています。
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