Learning by doing  | いのちがめぐる暮らし

まなび、めぐる暮らし

山のようにめぐる世界を目指して|KEIPE株式会社

Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.7

tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。

今回お話を伺ったのは、赤池 侑馬さん


心が満たされる場・働く喜びを伝える人を創る。KEIPE/ソーシャルグッドカンパニー代表。
Instagram @yuma.akaike


山のようにめぐる世界を目指して

障がいを特別なものにせず、誰もがそこに居ていい社会にする。そんな世界を目指し、2017年にスタートしたKEIPE株式会社。就労支援事業をはじめ、児童通所支援事業やフード事業、EC事業と、そのすそ野は広がり続けています。



福祉と地域社会をつなげながら、対価を得るだけにとどまらない、心満たされる職場と働き手をつくる。KEIPEを訪ねれば描く目的地が決して絵空事ではないと、きっと誰もが実感するでしょう。

病をきっかけに生き方を問い直し、心からやりたいことを事業に変えた代表取締役・赤池侑馬さんにお話を伺いました。


使い捨ての経営から、循環する経営へ

もともと目まぐるしいベンチャー企業に身を置いていた赤池さん。お金を集め、事業化や上場を目指し、立ち上げては手放し壊す。そんな「マネーゲーム」を繰り返してきたそう。

今となっては「落ち込んだっていい」と受け取れるネガティブなことも、ポジティブな学びに必ず変える。そんな想いに駆られて働き続けたある日、起き上がることができなくなりました。

「結核だったんです。70年前だったら死んでいましたよね。『やらなきゃ』と頭で思っていても、心と体が喜んでいないことをやり続けてきたことに、『これでよかったのか。本当にやりたかったことは何だったのか』病床で2ヶ月間考えました」

未来にフォーカスしていた頭をリセットし、今をみつめ、あらゆることを整理したそう。一年に渡る治療の中、現在のKEIPEに向かって歩き始め、コロナ禍を機に山梨へUターンしました。


「KEIPEは山みたいだな、と今は思っています。山には植物、動物、微生物の生態系がありますよね。生まれ、繫栄し、死に、還り、常に変化しています。はじめは事業の枠組みを決めていましたが、今は私の意志ではないところで事業が生まれ、時に死んでいく。そんな自然の循環に近い経営になっています」

業界や肩書きといった枠組みを手放し、変化し続ける有機的なあり方に恐れはない、と話します。赤池さん自身、山頂から「社長」として移り行く事業を見守るのではなく、自分も山に暮らし、自らの生を生ききるひとつの命、と認識しているそう。


足もとの課題を可能性に

生まれいづるKEIPEの事業には、環境に配慮したものが多くあります。回収した古紙を、トイレットペーパーに再生させ、ふるさと納税の返礼品にする。出荷できず廃棄される農産物を農家さんと商品開発し、販売支援していく。2024年3月には、解体する家からレスキューした建材や家財を販売するお店が甲府にオープンします。その名も「サイクル」。「サーキュラー・エコノミー※1」をゴールに見据えています。

※1 製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化する経済システム。これまでの一方通行でモノを使う「直線経済」からの脱却を目指す。


事業開発のテーマは「課題が可能性に変わる事業」。ベンチャー時代は、足るを知らず、常に欠乏感を抱き、可能性を探し求めていた赤池さん。今では足もとの課題を可能性に変えています。そこで感じるのは、理想と現実の矛盾。でも赤池さんは、この理想と現実は、どちらか一つを選ぶべき問題ではなく、バランスを取るべき矛盾だと言います。

「経営には合理性が必要です。でも、合理性を一番に追い求め鬱になったり、バーンアウト※2する経営者をたくさん見てきました。本当に欲しい自然に近い経営を実現するには、針の穴を通すようなハイスキルが求められます。『課題を可能性に変える』を『経済的合理性に合わせる』ことに難しさを感じていますね」

※2それまで仕事熱心だった人が、火が燃え尽きるかのように急に労働意欲をなくし、無気力な状態になること

山道を楽しむ

経営を家事育児に置きかえてみると「ていねいで豊かな暮らしや子どもとの関わりがしたいと心から思うものの、日々やることが山積みになる現実。仕事に加え、家事育児を効率よくこなしながらも、家族間の調和を保ちながら理想の暮らしをカタチにする」…確かに針の穴を通すようなハイスキルが求められます。

そんな時、課題解決だけに集中するのではなく、そのプロセスを楽しむことが持続可能性につながる、と赤池さんは話します。

 

「『楽しい!』という感覚を磨くことが大切ですね。例えば私は、新しい事業開発で可能性を見いだすことが大好きです。農家さんとつながって知らなかった業界を知り『やらなきゃ!』ではなく、『面白い!やりたい!』そんな気持ちを大切にしています」

KEIPEという、日々移りゆく山に新しい可能性を見いだし、山の手入れそのものを楽しむ。そこには「互いを活かし合うチームをつくる『KEIPE SCRUM』」という鍵がありました。

「自分にはエゴも煩悩もあって、完璧な人間じゃないんですよね。だから仲間と支え合うし、そもそも自社にこだわる必要もないと思っています。ノウハウを分けてくれる人たちとチームで実現していく。そして自分たちも教えられるようになったら、リソースを循環させ、次に継いでいきたいです」 


全てはいい人生を送るために

今、挑戦していることを伺うと「ユニバーサルレストラン」という耳慣れない言葉が返ってきました。聴くと、障がいのある人もない人も、ともに働くレストランだそう。

「障がいがある方たちは、どうしても裏方の仕事が多くなります。でも、ユニバーサルレストランでは表に立つので、とてもやりがいのある仕事になると思っています。誰もが活躍する場所をつくりたいですね」

サステナブルな事業を高い倫理観を持ってできる起業家を、山梨から1000人誕生させることにも挑戦したいそう。

「山梨が好きで、山梨で暮らす人たちと、山梨でやれたらいいですね。踏み出すのは怖いし、やれるかどうかはわからないけれど、チャレンジです。いい人生を送りたいから」と笑います。

二人目のお子さんが生まれたことで、日々の送り迎えや食事の支度もするようになった赤池さん。食べるものにかつてないほど興味津々で、先日は自分で炊いた小豆の美味しさに衝撃を受けたそう。

「米作りもやりたくて、今仲間を集めています。山梨でしかできないことや、みんなが食べていけることを実験をしていきたいですね」


みなさんが今、課題に感じていることはありますか?心からしたいことを想像できますか?

じぶんを大切に生ききることで、この世界をより良い場所に変えられる

赤池さんとKEIPEは体現します。取り巻く環境の変化を恐れずに味わい、楽しみを見いだしながら、移り変わっていく姿は、山の生態系そのものです。豊かに移ろう山の美しさから、今後も目が離せません。

KEIPE 株式会社

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松川 清美|@xoxoxkikixoxox
パンクス×フェミニスト。好奇心に導かれ、NGO職員、こどもみらいlabo代表、通訳翻訳者、ライターをパラレルに生きつつ日々試行錯誤している。3児に育てられ中。


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