Learning by doing  | いのちがめぐる暮らし

まなび、めぐる暮らし

つながる未来のために続く挑戦|wafu. linen clothing

Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.2

tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。

今回お話を伺ったのは、綿貫陽介さん


人生の質を上げる服屋、「wafu.」創設者。70年続く縫製工場→販売まで一貫するアパレル会社、公式レビュー1.7万件突破!妻と23年間ケンカなし更新中
Instagram @watanuki_wafu 
Voicy https://voicy.jp/channel/4523

つながる未来のために続く挑戦
wafu. linen clothing

私たちの暮らしに欠かせない衣服。ファストファッションからラグジュアリーブランドまで、さまざまな選択肢が増え、ファッションを気軽に楽しめるようになった反面、環境汚染や労働問題が近年、話題になっています。「wafu.」創設者の綿貫陽介さんもそんなアパレル産業が抱える闇に一石を投じ、独自のアイデアと戦術で現代を生き抜く一人です。リネン一筋でブランドを立ち上げたきっかけや揺るがない信念を伺いました。

個性豊かなwafu.スタッフのみなさん


万能素材・リネンを武器に立ち上げたアパレルブランド

中央市の静かな住宅街に、綿貫さんが営むwafu.の実店舗と、キッチンを併設した複合施設であるCIPはあります。70年以上続く縫製技術を受け継ぎながら、〝肌が自らの意思で選ぶような〟リネンの服づくり。その丁寧かつ意志のある職人の技術と、SNSで語られる綿貫さんの言葉が重なり、wafu.はファンから愛されるブランドへ育ちました。

今でこそ、告知をすれば在庫が切れるほどの人気を誇るwafu.ですが、家業であった縫製業を綿貫さんが継いだのは、24歳の時。古い自宅の小さな部屋で、ご両親と3人で服づくりに勤しむ生活。当時経営は苦しく、1日11時間服を縫う生活を3年以上続けても、生活は楽にはならなかったそう。


「周囲から服づくりという仕事を鼻で笑われたこともあってね。尊厳ある仕事がしたくて、デザインから販売まで一貫して行うオリジナルブランド『wafu.』の立ち上げを決意したんです」

そんな綿貫さんがブランド設立時に考えたのが、アパレル産業が生み出す負の側面について。


「大量生産・大量消費の時代で、売れ残った在庫品は廃棄対象になることがほとんど。廃棄方法についても土に還らないから埋め立てることはできないし、最終的には焼却されるという状況が日常化しているんです。最低限の負荷で最大の利益を生み出すことができるかどうか、企業家として問われているのではないかと感じましたね」

使用される素材や繊維が数ある中、wafu.が選択したのは植物性繊維のため生分解性に優れ、土に還る素材であるリネンでした。少量の水でも生育しやすく、肥料をほとんど使用しなくてもよい原料のフラックスは、地球と人に優しい最良の方法で作られています。コットンの2倍ほどの寿命で、暑い気候では湿気を吸収するとともに熱を逃がし、一方寒い気候では体温を保つ働きがあるなど、人の皮膚と同じように呼吸する素材である点も魅力。


「吸水性・速乾性・通気性・丈夫・汚れにくい・非アレルギー性などの性質に恵まれているなんて、まさに万能素材でしょ。使い込むごとに柔らかくなり、肌触りの変化や育てる楽しさがあり、サステナブルだといえる。ネップの出現や成形方法の難しさから、一般的にはリネンのみで勝負する企業は珍しいと思うけど、それこそが“味”やブランドの“特色”になると考えて、あえて挑戦した部分もあります」と、ものづくりに関わる者として、循環する未来を見据えた選択をしたのでした。

リネンの表情をより豊かにしてくれるネップ。

” もったいない ” をサービスに 

未来を見据えたwafu.の取り組みは素材選びだけにとどまらず、産業と環境保護の両立を目指しています。CIPでは作品の裁断後、大小、形、色に分別したリネンはぎれや、まっすぐ綺麗に裁断するために生地の横糸をほぐしたリネン糸など、通常は廃棄されてしまうものも商品として販売。また、裁断する際に使用した敷紙や生地の端(耳)を作品の梱包に使い、産業廃棄物に新たな価値をつけて、資源にしようとしたのです。


「どうせ捨てるのであれば、何か一工夫をして使ってもらえたらと思って、トライ&エラーの気持ちで試みてみたら、需要があることに気付いてね。表沙汰にはされない産業の負の側面を表面化することで、クリーンなものづくりが広がればと思って。その課程で雇用を生み出せたら、社会ももっと無駄なく回るのではないかって考えたんです」

他にも、一般店頭に並ぶことのないサンプルや、天然素材ゆえに特徴が多く出る商品、作業場ラックにかかる商品なども余すことなく商品として販売。「リネン入門編」として販売される新人職人が手掛けた商品の収益は、全額職人育成に使用され、縫製職人の育成の場が減少する現代において、未来のために続けられる仕組みも創出しています。

より多くの人が幸せになる未来を夢みて

「仲間とお客さまが幸せであることが自身の幸せ」と語る綿貫さんの原点ともいえるのが、イタリアのカシミヤ製造会社の創業者であるブルネロ・クチネリ氏の掲げる「人間主義的経営」だといいます。

カシミヤセーターを製造する小さな会社は、事業の目的を倫理的かつ経済的に人間の尊厳を追求することへシフトし、田舎の小さな村に拠点を移して廃墟となっていた村の古城を買い取り本社へ。その後も村を修復し、劇場や図書館、公園などの施設を設備して、地域が明るい未来を描くことができる活動をしているそう。「人間の幸福のために、人にも自然にも害や苦痛を与えずに豊かに生きる」。そんなブルネロ・クチネリ氏の経営哲学は、綿貫さんの仕事の在り方に大きな影響を与えました。


「僕がCIPで創造した世界観が合致していて、答え合わせではないけど、アパレルブランドだからと型にはまらず、いろいろとやりたいことに挑戦していいんだよなって、背中を押された気分でさ。wafuの自社製品を着て、CIPのカフェで食事をして。この中だけで仕事と衣食は揃った生活をしているから、ブルネロ・クチネリが創り上げた村のように、CIPを中心にこの地域周辺で循環する暮らしが実現できたら最高だよね」

アパレルの強みを最大限に活かし、デッドストック品の生地を買い取って販売できる服へ仕立てたり、新たなブランド展開、縫製を学べる学校や施設がほぼない山梨でのスクール開校など、攻めの姿勢を崩さない綿貫さん。

アパレル産業を尊厳ある仕事に確立して産業を継続させ、環境負荷をできるだけ抑え、資源を循環させること。大量生産で感じた違和感から、一過性ではない未来のために何が出来るのか社会を考えること。「未来は自らの手で変えていける」と前向きに行動し続けるその姿に、ファンが多いのも納得です。綿貫さんの言葉に、「豊かさとはなにか?」改めて考えさせられる時間でした。経済合理性が優先される社会の中で、私たちが失いかけてしまった人生哲学と、新たな世界観に出会えるはず。ぜひ皆さんも、CIPの扉を開いてみてくださいね。

wafu. linen clothing

〒409-3823 山梨県中央市上三條511−1 MAP
HP https://handmade-wafu.com/
Instagram  @wafu_linen
実店舗(山梨) @cip_yamanashi
人生哲学アカ ⁡@wata.give
YouTube https://www.youtube.com/@watanukichannel

\ wafuの3Rとは? /


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世界のトップ経営者たちが「未来の経営モデル」として注目する「人間主義的経営」についてクチネリ自身が語った一冊。 自然と人間と夢への志を尊重する「正しい労働」という概念。ブルネロ・クチネリが掲げる人間の尊厳と自然との調和を事業の目的とした「人間のための資本主義」は、イタリア国内に限らず広く海外からも注目され、数々の賞を受賞しています。
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