Learning by doing  | いのちがめぐる暮らし

まなび、めぐる暮らし

生まれ、育ち、また産まれる|助産院 peekaboo

Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.3


tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。

今回お話を伺ったのは、坂本こずえさん


座右の名は「明日やろうはバカやろう」。暮らしの営みを整えながら、命と向き合う助産院 「peekaboo」を経営するスパルタ助産師。マイブームは甘酒酵母のパン作り。
Instagram @kozu_pkb

生まれ、育ち、また産まれる
助産院 peekaboo

人は本来、生命を自然に生み出す力があるはずなのに、いつしか医療介入をするお産が当たり前になった現代社会。もちろん、だからこそ助かる命があり、一言で語ることができないのも事実です。それでも、出産をするという選択肢の中に助産院があることを知っている方は少ないのではないでしょうか?

女性にとって大きな人生の転期である妊娠・出産。数々の出産に立ち会い、自らを「スパルタ助産師」と呼ぶお産のスペシャリスト・坂本こずえさん。妊娠出産時だけでなく、生涯関わり続けられる場所と存在でありたいと、「助産院マミィ&べびぃケアサロンpeekaboo」を営んでいます。子どもたちの未来に思いを寄せながら、心身ともにケアをする坂本さんにその想いを伺いました。


家族で新しい命を迎える

出産や子育てのサポートを通じて、子どもたちが自然体で生きていく未来を実現するため、助産院とケアサロン、訪問看護が連なる家族みんなで通えるような助産院にしたいと、2023年11月13日装い新たに甲府市へ移転オープンしました。


peekabooが大切にしているのは、「自然に産まれる」ということ。出産は、お母さんの意志が赤ちゃんにも伝わります。誰と一緒に、どう産み育てていきたいのか?ただ健診をして出産までの月日を過ごすのではなく、命との向き合い方を教えてくれる場所と言えるのかもしれません。

“マイ助産師”として、助産院での出産だけでなく、自宅出産やオープンシステム(*1)も手掛け、妊婦さんの心と身体に寄り添います。

移転してから初めてのお産。アットホームな空間の中、家族で赤ちゃんを迎えられるのが助産院の魅力。


「助産師は薬の投与や機械的な介助など、医療介入はできないんです。それでも、私たちがママへ投げかける言葉一つで、いくらでもお産の良し悪しを左右するほどの存在。ママも赤ちゃんも自分の力を信じて、生まれようとしている自然な流れをサポートして導いていくことが、助産師の腕の見せ所なんですよね」

坂本さんの考える自然な流れは出産にとどまらず、出産後の環境にスムーズに適応できるよう、ご家族にも積極的に関わっていきます。

「コロナ禍以降、出産時に付き添いできない病院が増えました。お母さんが苦しそうに病院へ行ったと思ったら、いきなり赤ちゃんを連れて帰ってくる。お家で待っていたお兄ちゃんお姉ちゃんからしたら、戸惑っても無理はないですよね」

自宅はもちろん、助産院でのお産は家の中にいるようなリラックスできる空間。新しく生まれた赤ちゃんが当たり前に迎え入れられて、家族みんなが溶け込める環境を作ることができます。そうした中だからこそ母性や父性も自然に芽生えていくのだとか。


「自宅出産の場合には特に、ご夫婦の意見が一致していなければ協力を仰ぐことも難しいですし、他人事では困りますよね。尊い命を産み・育てるのだから、責任を持つのはもちろん、誰かにおんぶに抱っこじゃなくて、お母さん一人でもなく『家族で産む』という意志が大切なんです」と、新しい命を迎える家族の在り方を教えてくれました。

*1…妊婦が病院に“マイ助産師”を同行した上で、出産のサポートをお願いすることができる出産のシステム。坂本さんは、オープンシステムの言葉が浸透する以前から、担当助産師として妊婦検診、出産、産後の訪問等、産前から産後まで一連の流れをすべて請け負うようなサポートを行っていた、いわばパイオニア的な存在。


母体と赤ちゃんから見る現代社会の弊害 

助産院と平行して運営するケアサロンでは、個人に合わせた体のケアや、子どもを取り巻く大人の知識向上にも注力し、ピラティス、発酵料理などの各種教室も開催しているそう。長年、助産師として女性の身体を見てきた坂本さんだからこそ、今と昔で大きく変化する体と暮らしにも目を向けます。

「昔は骨盤ケア用のベルトサイズはSかMが主流だったけど、今はLかLLが多いです。これは、女性の身体が緩んでいる証拠。生活スタイルの欧米化によって、足腰が使われず、骨盤の歪みやホルモンの影響を受けやすい体になっているんです。その結果、妊娠時の体調不良や赤ちゃんが未熟な状態で生まれる要因にもつながります。本来、母体内で培われるはずの筋力が弱いまま生まれるため、昔は必要のなかったケアが必要になっているんですよね。さらに、便利な育児アイテムを多用することも赤ちゃんの身体が歪む一因になり、悪循環だなと感じます」

そのため、サロンでは身体づくりを徹底し、整体やアイテムを用いた運動や自宅でできるケア指導まで、目的に合わせてさまざまな角度からアプローチを行います。時には厳しい物言いも坂本さんならでは。よりよい子どもたちの未来を想う愛情表現の一つといえます。

入院中の食事は、母乳にも嬉しいお野菜たっぷりの発酵料理。



信頼関係が還る場所を創る

生活スタイルだけでなく、少子化、核家族など、育児の環境も変化する現代。過保護や過干渉の弊害も指摘されている中、坂本さんも「100%守ってあげることが愛ではない」といい、親子間で信頼関係を育む重要性を語ります。

「産婦人科医で、胎内記憶の第一人者でもある池川明先生が“子育てがうまくいったかどうかは30歳になった時にわかる。子どもが社会に適応できて初めて成功だ”と仰っていて。私も社会の一員となる子どもたちの生きる力を育んでいきたいと思っています。愛って、優しさだけじゃないんですよね。厳しさだって愛情だし、子どもを信じて信頼関係を築くことで、安心感が育まれて、家が戻りたい場所になる。そうやって暮らしが巡ることで新たな命が生まれるし、その時にこの助産院に戻ってきてくれたら嬉しいなって。それが私の理想の循環です」と坂本さん。

カラッとした明るさと歯に衣着せぬ助言で、訪れるママと赤ちゃんの未来を支える坂本さんからは、大きな愛が感じられました。


「妊娠・出産を通してみんなが赤ちゃん中心の生活になる。生活が変わることは大変なこともあるけれど、何があったとしても一つ一つ大切に向き合うと、今までの価値観が変わって家族の絆が深まっていく。赤ちゃんの存在ってすごいですよね。スパルタだからたくさんのママを泣かせてきたし、突き放してきたし、もう行かない!って言われたこともある。それでも、この時間を大切に過ごして欲しいという気持ちは、伝わっていくと信じています」

世代が変わっても、出産をしてもしなくても「家族」という存在のそばにあり続けたいと願う坂本さん。妊娠・出産は自分の人生と向き合う尊い時間。厳しくも愛ある坂本さんの言葉は、きっと沢山の気づきを生み出してくれる。

マミィ&べびぃケアサロン peekaboo

 〒400-0814 山梨県甲府市上阿原町971-1 ケアタウン甲府東101 MAP
HP https://peekaboo-mh.foscare.jp
Instagram @peekaboo.official
マミィ&ベビィケアサロンpeekaboo @mb.caresalon.peekaboo 
訪問看護ステーション影法師 @kageboushi_hvn

\ この記事に関心のある方へオススメの本はこちら /

すべてのママに贈る、 子どものいのちからのメッセージ。 胎内記憶の第一人者・池川明氏と、 アメリカで魂の助産師として母子の声を聴き続けた 世界初の男性スピリチュアルミッドワイフ・上田サトシ氏による共著。


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