山梨でみつけるエシカルな暮らし

まなび、めぐる暮らし

食べることから排泄までの営みを通して、生きることに向き合っていく|熊鰹商店

Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.14

tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。

今回お話を伺ったのは、小林 紗和さん


甲府で八百屋熊鰹商店とkuccaの布おむつ販売&kucca排泄講座を開催。2児の母。身体に優しいご飯、お手当、絵本、自然体育児がすき。
Instagram @sawa_tea @kumakatsuo_shoten @kucca_shop

食べることから排泄までの営みを通して
生きることに向き合っていく

近年、深刻になっている海洋プラスチック問題。私たちの生活に欠かすことのできないプラスチックですが、マイクロプラスチック化することによる海の生物への影響は計り知れません。世界中の海に流れるプラスチックごみは、年間約800万トン。ジャンボジェット機の重さにして換算すると、5万機相当が新たに流入しているとも言われています。1人当たりのプラスチックごみの発生量は、アメリカに次いで世界で2番目に多いと言われている日本で、私たちが日々の暮らしを見直すことは、それだけ大きな影響力があるということ。

パッケージのごみが少しでも減るようなお店にしていきたいと話してくれたのは、甲府市朝日通り商店街で「熊鰹商店」を経営し「布おむつのお店kucca山梨」や「ネイキッドマルシェ」など、環境や健康に関わる様々な取り組みを行う小林 紗和さん。2児の母でもありながら、活動に広がりを見せるその行動力の源を伺いました。

安心して食べられる新鮮野菜が並ぶ熊鰹商店店内

持ち込んだマイ容器で、パッケージフリーの買い物をすることが出来る熊鰹商店。地場野菜や無添加・オーガニックの食品をはじめ、ドライフルーツや香辛料などを必要な分だけ量り売りで購入することが出来ます。取材に伺ったこの日も、小さなお子さんがお母さんと一緒にドライフルーツを瓶に詰めて量り売りを楽しんでいました。

可愛いビンがずらり…!量り売りで購入できる商品や日用品が並びます。kuccaの布おむつの購入もこちらで。


「東日本大震災」という転機

紗和さんのいまの活動につながる原点は、2011年3月11日に東北地方を襲った東日本大震災。あの日から生き方を見つめ直し、人生が変わったという人も多いのでは無いでしょうか?当時東京に住んでいた紗和さんも、そのうちの一人でした。

「食への価値観が変わったのは、震災の影響が大きいですね。あのときちょうど妊娠5ヶ月だったんですが、原発事故のあとに水道水からセシウムが検出されて。夜中、市役所の方が妊婦さんと子どもがいる家庭に、水を抱えて届けにきたんです。水が安心して飲めないんだという事がすごくショックで…。近所の公園にもホットスポットがあって、子どもに汚染された物を食べさせたくないという思いと、これから子どもたちに何を残していけるのかを考えたときに、食の安全性や食を通しての豊かな暮らしのあり方を考える様になりました」

その後、健康的なライフスタイルにシフトしていく中で、”故郷に戻って地域貢献したい”というご主人の想いに賛同し、山梨へ移住。東京にはない田舎の豊かさと、子どもファーストで生活できることの心地よさに喜びを感じながら、布おむつの良さを伝える活動を続けていたある日のこと…。今度はコロナ禍がきっかけとなって、紗和さんにとっては想定外のことが起こりました。

熊鰹商店始まりのきっかけは
コロナ禍で行き場を失った野菜たち

飲食店向けに野菜を卸していた農家さんは、コロナによる飲食店の相次ぐ休業により、野菜を出荷する事ができなくなり、せっかく収穫を待つ野菜たちも、そのまま畑に放置しなければならないような状況に。様々な農家さんの声を聞いた仲卸業者さんより、”甲府で野菜の販売ができないか?”と頼まれ、行き場を失った野菜たちを救済するべく生まれたのが、熊鰹商店の始まりでした。

「いきなり夫からイロハクラフトさんに呼び出されて『お店のフローリング材を選んで』って。ビックリしましたね。今でこそ好きなものを並べているけれど、まさか自分がお店をやるとは思っていなかった」と笑いながら当時を振り返ります。意外にも、戸惑いからのスタートでした。

ロスを減らすはずが…
リアルな現実と初年度の壁

穏やかながらも気さくで、包み隠さずナチュラルな空気を纏う紗和さん。訪れるお客さまとスタッフとの交流もフレンドリーで、お店の運営も最初から順調かと思いきや…本人曰く「失敗しかしてない」のだとか。

「乾物などの量り売りでいうと、1年目は本当に難しさを感じました。無添加やオーガニックの食材は、農薬や保存料・防腐剤も使われていないので、酸化して味が変わってしまったり、傷んでしまったり。毎日品質のチェックをしながらの試行錯誤の中で、”ロスを減らすための取り組みなのに”と無力感に打ちひしがれたことも、一度や二度ではありません。自然のものだからこそそれがリアルだけど、味が変わって売れなくなったレーズンをおやつに毎日食べていたこともありましたね」

当初はロスが多く出たものの、熊鰹商店で売れ残った野菜などは、週末忙しくなる飲食店を経営しているご主人の会社で、フードロスがないような取り組みを行っているそうです。

「いまはやっと、野菜に関してはいい循環体制が出来上がっています。農家さんとの直接取引&集荷も自社で行っていて、月曜日に朝穫れの新鮮なお野菜を仕入れ、火曜日〜金曜日に店頭に並びます。その週で残ったお野菜は、夫が経営している『Dreammap』の各飲食店で、野菜が傷む前に調理してもらう事ができるようになりました。飲食店の方でも地場野菜などを使い、調味料などもほとんど手作り。グループ全体で良い循環ができる仕組みを構築できたのも、飲食店を経営しているという会社の強みを活かし、サポートし続けてくれた夫のおかげだと思っています」

温度管理の徹底や店頭に並ぶ商品の出し方を試行錯誤しながら、やっとロスがでなくなったのは2年目を過ぎた頃。実践するからこそ立ちはだかる壁に、沢山の失敗と悩む日々を乗り越えての今がありました。

食べることから排泄までの循環を通して
生きることに向き合っていく

熊鰹商店でも販売している「kucca」という布おむつのブランドも、紗和さんが取り組んでいる活動のひとつ。肌に優しい上に、ゴミが出ず経済的で、おむつが早く取れるといわれている布おむつですが、それ以外のメリットもあるそう。

「乳幼児期の発達過程の一つに”快と不快の育み”があります。今、子どもも大人も、この自分から湧き上がる”快と不快”の感覚が分からない人が増えているんですね。”排泄行為”は、人間の本能欲求の”快と不快”の最たるもの。生まれてから死ぬまで在り続けるものです」

「人間の自然な行為である「排泄」と向き合うことで、赤ちゃんとの関係性の土台を作り、お互いの信頼関係を育むきっかけになってくれるんですよね。『気持ち悪いね〜おむつかえようね』って、子どもたちの身体に起こったことに親がちゃんと興味を持って語りかけてあげること。この共感共有の相互関係から親子の信頼関係は育まれて、本能的な欲求を肯定される事で、”快と不快”がカラダに刻まれていく。自己肯定感とよく言われますけど、自己肯定感の根っこは、この”快と不快”が大きく関わっていると思っています」

排泄という、人間としてのありのままを受け入れてもらうことは、大人が考えている以上に、子どもたちにとっては大きい事です。人として尊重し丁寧に関わってもらえた事、ここに全てが詰まっている。”五感を育む”というと、ありふれた言葉のように感じますが、その本能の感覚から体験や体感を通して、確かな自分の感覚が分かっていれば、何かが起きた時にも「自分にきっと立ち返る事ができる」と紗和さん。

「熊鰹商店とkuccaは一見違う取り組みですが、ヒトがヒトらしく、人との関わり合いの中で、生きることに向き合っていくという点では、伝えたいことは全く同じ。食べることから排泄という暮らしの中にある営みを通して、
社会や自然、人の中での循環を享受する。子どもも大人も、人として尊重し、尊重される温かな関わりの中で生きていく事の豊かさを、何世代も超えて伝えていく事が、今この時代に生きる私たちにできる事だと思っています。熊鰹商店やkuccaの考え方に、まずは触れて考えるきっかけにしてもらえれば嬉しいです」

循環は心地よさがあってこそ

「無農薬だからとか身体にいいと分かっていても、心地よさとか美味しさがないと続かない。それって、循環しないということですよね。だから、このお店に置く商品は必ず味見をして、私たちが美味しいと思える基準で選んでいます。頭で考えるよりも、心地いいって感覚で選ぶ。まずはそこからですね。『美味しい』って、絶対的な正義だと私は思うから」


何から手に取ればいいのか迷った時は、マイ容器&マイバックを持参して熊鰹商店を訪ねてみて。選択を楽しむところから体験してみると、きっと世界が広がります…♩

熊鰹商店

〒400-0025 山梨県甲府市朝日5丁目5−8
TEL 070-3965-8131
Instagram @kumakatsuo_shoten
Facebook @KumakatsuoShoten  
営業時間:10:30~18:30
定休日: 土、日、月

\ 紗和さんオススメの本はこちら /

社会の変化に伴い、育児方法や育児の考え方は大きく変化した。育児不安を持つ母親はますます増加し、近年問題になっている過干渉や放置、虐待など、社会のゆがみは、そのまま子育てに影響している。著者は、子どものありのままを受け止めることが大切だと強調する。
楽天ブックス生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きている── 数カ月も絶食して卵を守り続け孵化(ふか)を見届け死んでゆくタコの母、 地面に仰向けになり空を見ることなく死んでいくセミ、 成虫としては一時間しか生きられないカゲロウ、 老体に鞭打ち決死の覚悟で花の蜜を集めるミツバチ……。 生き物たちの奮闘と哀切を描き感動を呼んだベストセラーの文庫化。
生きることは食べること、食べることは生きること。「性」と「生」と「食」はつながっている。第1章 生を見つめて(性から生へ、生から食へ/私はあなたを愛するために生まれてきました/そこにいるだけでいいんだよ/無限の可能性をもつ子そもたち/命が大切ではなく、あなたが大切/生ましめんかな)など


岩崎 舞@taneto_mai
エシカルメディア「taneto」編集長。山梨在住、2児の母。セラピスト歴18年。憧れの起業家はYAMAPの春山さん。人生の物語りと哲学、めんどくさくて泥臭いことが好き。


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