山梨でみつけるエシカルな暮らし

まなび、めぐる暮らし

森のちいさな生命をまもる「アニマルパスウェイ」|ヤマネ・いきもの研究所

Learning by doing
実践しながら学ぶ|vol.19

tanetoのテーマの一つは「 – Learning by doing – 実践しながら学ぶこと」。環境問題に取り組みたいと思っても問題が複雑に思えて「何をしていいのか分からない」という声も多いなか、正解のないこの時代に進む道をみつけ、ひと足先に「めぐる暮らし」をはじめているあの人にお話を聞いてみるコーナーです。

*この記事はMiraiプロジェクトでお届けしています

今回お話を伺ったのは、饗場 葉留果さん。

ヤマネ・いきもの研究所の研究員でヤマネ研究のプロフェッショナル。 日本文学を大学で学び動物への強い思いを抑えきれず卒業後、野生動物の専門学校に入学。そしてやまねミュージアムのスタッフを15年間つづけた後に、ヤマネ・いきもの研究所の湊 秋作さんと研究・保全活動に尽力中。好きな生き物は森に暮らすヤマネ、田んぼに暮らすホウネンエビ、土中に暮らすカニムシたちです。

 
生き物への愛があればきっとできる

皆さん、ヤマネをご存じでしょうか?くりっとした目にふわふわのしっぽ、そして背中には黒い一本すじがあるのが特徴の小さな生き物です。大きさは手に収まるくらいで卵よりも軽く、夜行性で、すばしっこいまさに「森の忍者」であるヤマネは今、住む場所が減ってしまっているという厳しい状況にあります。そんなヤマネを守るため「ヤマネ・いきもの研究所」で研究と保護活動に情熱を注ぐ研究員たちがいます。


「知ることで守れる。そう信じています」
そう力強く語ってくださったのは研究員の饗場さん(以下、饗場)でした。

守りたいがカタチに
命のかけはし「アニマルパスウェイ」

稲生 研究所ではどんな取り組みをしているのか教えてください。

饗場 私たちはヤマネや生き物の暮らしについて調査、研究し、彼らを守ることができる方法を模索しています。山梨県だけではなく、三重県尾鷲市でアニマルパスウェイの建設を推進したり、紀伊半島での生態調査を行ったりと日本各地で活動しています。

 
稲生「アニマルパスウェイ」という言葉を初めて聞きました。アニマルパスウェイってどういうものなんでしょうか?

饗場さん 道路で分断された森と森をつなぎ、木の上に暮らすリスやヤマネなどが住んでいる森を切り開いて作られた道路を彼らが安全に渡れるように作られた橋、それが「アニマルパスウェイ」です。

人間の開発によって分断された森を、つなぐことを目的としています。ヤマネだけでなく、リスやヒメネズミなど、木の上で生活する小動物たちの命を守る、道です。


アニマルパスウェイの前進は、1999年に建設された「ヤマネブリッジ」です。これは、山梨県の道路公社と共同で開発されました。建設費用は当時の価格で2000万円。この橋は、ヤマネもリスもヒメネズミも使っています。

そこで、次のステップの普及型として、ア ニマルパスウェイの開発を2004年から行ってきました。アニマルパスウェイの開発と拡大に はいろんな人たちの協力が不可欠です。アニマルパスウェイは、最初、大手建設業者2社と共に開発を開始しました。そこから、さらに多くの仲間を集め、これまでに様々な企業の方の働きや多くのボランティア活動のおかげで、山梨県北杜市にある1号機は約200万円でつくることに成功しました。

そこから、さらに多くの仲間を集め、これまでに様々な企業の方の働きや多くのボランティア活動のおかげで、山梨県北杜市にある1号機は約200万円で作ることに成功しました。

アニマルパスウェイはたくさんの人たちの思いの結晶です。一つ一つ丁寧に説明や調査を重ね、少しずつ理解の輪は広がっています。この取り組みが、人と自然の共生のシンボルになればいいなと思っています。

つながる思いが森を守る


稲生 研究や森の保全活動をしていて問題だと感じることは何ですか?

饗場  一番の課題は、小さな夜行性のヤマネのこと多くの人が知らないということだと思います。「守るためには、知らなければならない」なので、私たちはヤマネを始め様々な生き物たちの調査・研究を行っています。そして、その結果を保全や教育(伝える)に活かしています。

その「知る」という研究面では、資金の確保が大切ですね。ヤマネの暮らしを観察するために発信機を使うと、使い切りで1つ3万円ほどしますし、それ以外にも色々な費用がかかります。それらの資金をいかに確保するかは課題です。私たちだけの資金では研究などの活動 をするのは難しく、これまで自然活動に関する助成金を利用もしながら活動をしてきました。そのおかげでこれまでにヤマネのことがわかってきました。助成いただいてきた団体様には感謝しています。

 また、保全活動は理解を得るまでにとても時間がかかります。そのために活動を広げていくのにもたくさんの時間とエネルギーが必要です。研究の意義を理解してもらいつつ互いに共感してもらうのが難しいですね。それでも、アニマルパスウェイの活動は様々な人と共同できているので、とても良い事例だと思います。 

稲生 保全活動と聞くとすごく大義があって何でもできるように感じるけれど、続けていくには長い間の支援が必要なんですね。

饗場 一朝一夕ではいかない問題ですが、自己流で道を切り開いてきました。保全の活動には、多くの理解が必要です。そのため、ヤマネのことをお伝えする、市民の方向けのイベントを行ったり、企業向けの研修プログラムを行ったり、クラウドファンディングをしてみたりと色々な解決策を探しています。支援者の方々には定期的に活動報告をし、お互いのコミュニケーションを大切にしています。

のこしたい自然のために

稲生 研究やたくさんの活動を頑張ることができる原動力は何ですか?

饗場 田んぼにいるホウネンエビを見つけたときのうれしさ、かわいいヤマネに出会ったときに感じたときめき、何より生き物に出会うことのワクワク感。こういう、私が体験した感覚をいろいろな方に感じてほしいです。この思いが私を動かしています。

ヤマネもだし、私たちが見ている生き物たちの世界を未来に残していきたいと思っています。


ヤマネたちが教えてくれる自然の素晴らしさ。この美しい自然を守り、次の世代につなげるように活動をしている饗場さんたち。その活動を皆さんも応援してみませんか?ヤマネたちが、そしてヤマネ・いきもの研究所のみなさんが、あなたの参加を待っています。

一般社団法人 ヤマネ・いきもの研究所

稲生 明日香
面白そうなことがあればあと先考えずに動いてしまう大学生。taneto編集部で絶賛ライターの修行中。きのこが苦手で、「死ぬこと以外はかすり傷」という言葉がお気に入り。

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